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無学の人間、ひめゆりの塔へ行く ~女子学徒隊への詫び言~

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私は学がない。

自分で認めてしまうと一層悲しくなるが、事実なのでこれ以外の言葉がない。

小学校、中学校、高校と勉強をおろそかにしてきたし、授業態度も良くなかった。中学生の時に、社会見学でひめゆり平和祈念資料館に行った時も、私は終始友達とお喋りをして見学を終えた。感想文は友達のものを見て言葉を少し変えてから提出するという、質の悪い子供であった。

 

そんな私が、ただの土曜日の正午頃にふらりと、ひとりでひめゆりの塔・ひめゆり平和祈念資料館へ行ってきた。あれから少し成長したのかと思われそうだが、そうではない。「他県の観光名所は行きたがるのに、地元の観光名所に行かないのは道理に適ってない」と、ふと思い至ったのだ。

 

 

「ひめゆりの塔」は、沖縄戦で看護要員として従軍した、「ひめゆり学徒隊」の鎮魂のために建立された。「ひめゆり」の名は、県立第一高等女学校の校誌名「乙姫」、沖縄師範学校の校誌名「白百合」を組み合わせ作られた「姫百合」という愛称からつけられたのだと言う。

てっきり「ひめゆり」という学校名なのかと思っていたがそうではないようだ。

 

 

那覇市からナビを頼りに原付を走らせ、なぜか田んぼに案内されながらも、沖縄県糸満市伊原にある、「ひめゆりの塔」に辿り着いた。塔までの行程は道が広く真っすぐで走りやすいうえに、広々とした無料駐車場まである。バイクに乗るのが好きな私はこの時点でホクホクと満足していて、原付を停めながら「今日はいい経験になる」と漠然と感じていた。

 

 

もう一度書くが、私には学がない。

書くか迷ったが、自分の頭の悪さを戒める為に素直に此処に恥を記しておこうと思う。

 

私は「ひめゆりの塔」が「東京タワー」のように高い建造物かと思っていた。

 

実際には塔は数十cm、身長157cmの私よりもずっと低い。糸満市を原付で走っている時に「塔なんて見えないけどどこにあるのかなー?」などと空を見つめていた自分がとても恥ずかしい。

社会見学に来た時に気づくべきだったが、注意力のない不真面目な生徒だった私は気づきさえしなかったし、そもそも塔を探そうなどとも思わなかった。教師への反発で忙しかったのである。

 

 

ひめゆりの塔入口には献花用の花が売られている。沖縄戦に詳しくない私が供えてよいものか迷いつつ、恐る恐る200円を支払い、花を受け取った。慰霊碑の前に供えて、隣に設置されている募金箱にそっと小銭を入れた。かつて不真面目な生徒だった頃の自分の行いを、詫びたいと思う気持ちからだった。今度は真面目にあの戦争を知ろう。そう心に決めてから、私は塔の隣に併設されたひめゆり平和祈念資料館に入った。

 

館内へは障害者手帳を提示すると無料で入館できる。入館してから、私は緊張から、ずっとビクビクキョロキョロしていた。資料がある展示室に入る前にトイレがあるのだが、とりあえず入っておこうと思って間違えて男性トイレに入りそうなくらい余裕がなかった。

だが、壁にかかった大きな資料の前に立った瞬間、ビクついていた自分が消えた。

 

食い入るように、私は夢中で資料の説明文を読んだ。ひとつのパネルを読み始めたら、いつの間にか最後の文字に辿り着く。そして、次へ、次へと資料を追って館内を歩き回った。すべてに目を通した。まばらだった人が気づかぬ内に増えていて、私を置いて先に行く。連れに急かされて次の展示室へ足を向ける人を見て、誰にも急かされず資料をじっくり読める事が幸いだった。

 

私は無心で目の前の文字たちを追った。戦争時の辛く厳しい環境の体験談が沢山書かれた資料の前で、私は涙を落とした。

 

資料を読んで一番驚いたのが、「ひめゆり学徒隊は普通の学生だった」という事だ。

「彼女たちはきっととてつもない程、国が好きであった」、「自己犠牲の精神が生まれつき備わっていた」、「兵の為に命を投げ打つ覚悟が生まれつきあった」、「彼女たちは私にはできない事を当たり前のようにできる」。そんな訳がないのだ。

彼女たちは普通の学生で、高校生の時の私となんら変わりない。友達と遊ぶのが好きで、楽しい事が好きで、可愛い小物も好きな、ただの女学生だった。

 

資料のひとつとして、学生が友人たちと学校の近くの写真館で撮った一枚の写真がある。友人の肩に手を置いてポーズを決めて、可愛く写ろうとしたであろう写真だ。そっくりなのだ。友人と遊んでいた時の私と。彼女たちと私たちとの違いと言えば「時代」だ。たったそれだけで、なんでこうも変わるのだろう。

 

社会見学で資料館に来た中学生の時、私はまだ考え方が幼稚だった。小心者で、他と違う事をしたくなかった。周りが先生の話を聞かないから、周りが感想文を写して提出するから、体験談を読んで涙が出そうなのを必死にこらえ、泣かないよう目をそらした。

馬鹿だと笑っていただきたい。一番してはいけない事をしたのだから。

 

 

愚かだが、それを愚かだと気づく事ができて本当によかったと思う。このまま突っ走っていたら何の価値もない人間になっていただろう。

長くなったが、私は確かに女子学徒たちを思って涙を流した。これだけは忘れず、彼女たちの思いや行動を忘れそうになる度、平和祈念資料館に訪れたいと思う。

 

 

 

書いた人・きゅう

 

 

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